自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の資金繰りの極意
自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の資金繰りの極意

自動車輸入販売会社(ディストリビューター)が押さえるべきキャッシュフロー管理の要点を解説。資金繰りの違いから金融サービス活用法、パイプラインコントロールまで、実務ですぐ使えるノウハウを網羅します。
自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の機能
自動車はグローバルな流通網を発展させていきました。その中で重要な役割を担うのが自動車輸入販売会社(ディストリビューター)です。自動車を製造・輸出するメーカー、最終消費者に販売するディーラーの間に、自動車輸入卸売会社のディストリビューターという組織・機能が存在して、グローバルな自動車流通網の要となっています。
ディストリビューターは担当する市場の販売に付いて責任があり、常に適切な在庫を確保しておく必要があります。そのため、非常に多額の資金が必要です。また、ディーラー や顧客の購買を支援して販売増加を図る必要もあります。

資金繰りと損益の違い
会社の業績を示す決算書で良い数字を上げることは経営者にとって最も重要な仕事の一つです。その中心となるのが損益計算書と貸借対照表です。多くの場合、企業の業績を述べるとき損益計算書上の売上・営業利益・当期純利益などを参照します。これは、ある期間中に発生した商品・サービスの見返りとそれに対応するコストの差分です。
一方、実務を回していく中において、発生ベースでの利潤の大小よりも、現金の出入りとその残高、すなわち資金繰りが最も重要になります。
ディストリビューターの資金繰り
ディストリビューターは多くの在庫をマネジメントする必要があり、資金繰りはとても重要です。ディストリビューターの多くは海外から自動車を仕入れることとなり、輸出から輸入して出荷前検査する必要があり、仕入れから販売までのリードタイムが長くなります。この長いリードタイムを勘案せずに、支払いを済ませたが輸送中の商品を販売できずに資金がショートしてしまう黒字倒産の事例はたくさん聞きます。ディストリビューターはリードタイムと販売計画を把握して、それに応じた資金計画を立てる必要があります。それらを元に、金融機関や輸出者に対して金融サービスを依頼することになります。
販売増加のための金融サービス
ディストリビューターは在庫機関の資金負担をすることになります。その一方、ディーラーもディストリビューターから仕入れて、消費者に販売するまでの在庫期間の資金を負担しなければなりません。
ディストリビューターは、ディーラーが資金負担できないことを理由に販売機会を逃すことをサケなければなりません。ディストリビューターは、ディーラーからの改修を遅らせたり、金融機関と提携してディーラーへのフロアファイナンスプランを組んだりする、ことがあります。
更に、自動車のような大きな買い物を現金一括で変える人は少ないので、消費者もディーラーから購入する際にはローンを組みます。ディーラー独自で金融機関と提携することもあれば、ディストリビューターが広域でサービス展開している金融機関と提携することで、多くの引き合いを土産により良い金利条件を引き出せることもあります。
パイプラインコントロールで資金繰りを見る
ディストリビューター経営において資金繰りは極めて重要ですが、実際どのように資金繰りを管理するのでしょうか。
ディストリビューター経営の現金の出入りの大半は車両の購入と販売です。すなわち、車両の動きを将来に渡ってしっかり把握できていれば、それに応じた資金繰り計画を作ることが可能です。「今月発注したクルマは2ヶ月後に船積みされるからいくら支払いが発生するな。その時までの売上を合わせた現金残高はいくらだから支払いできないため、数ヶ月支払いを送らせてもらおう」といった具合です。
そのために、多くのディストリビューターは荷繰り表・カーフロー・ランダウンと呼ばれるような、自動車流通パイプラインのコントロールシートを作成します。
金融サービス提供者もこのパイプラインコントロールを共有してもらえれば、どれだけ与信できるかの判断材料となります。
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この記事を書いた人

- 1983年7月8日生。2007年早稲田大学卒業。伊藤忠商事(株)に入社し、東南アジア・アフリカ向のトレード・事業投資・管理に従事。2013年、自動車メーカーに出向し、販売・アフターセールス部門GMを務める。2019年、common(株)を設立し、代表取締役 CEO就任。BCG, McKinsey, Accenture, NEC, Deloitteなどへの自動車ビジネスコンサルティング実績多数。米国公認会計士全科目合格。