自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の販売在庫の効果的な管理方法とは

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自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の販売在庫の効果的な管理方法とは

自動車産業の輸入販売におけるディストリビューターの役割は、一見目立たないものの、業界の根幹を支える重要なものです。本稿では、このディストリビューターが果たす役割に焦点を当て、彼らの働きと業界全体への影響を深く掘り下げます。新車の流通から販売、在庫管理、さらには現代のSaaSによる管理方法まで、幅広い視点からこの重要な役割を解析します。

自動車輸入販売会社(ディストリビューター)の役割

グローバルな産業である自動車の流通は確立されています。自動車を製造・輸出するメーカー、最終消費者に販売するディーラーが存在することは自動車業界外の方でもイメージできていたかと思いますが、メーカーとディーラーの間に、自動車輸入卸売会社のディストリビューターという組織・機能が存在することを知らない方は多いのではないでしょうか。

新車の流通 〜製造・貿易・卸売・小売〜

ディストリビューターは新車流通の各工程の情報を収集し、スムーズに新車をデリバリーできるよう努めます。具体的には、ディストリビューターは、メーカーに新車の生産と輸出を依頼します。輸出された新車が、現地に到着すると輸入通関の手続きを行い、出荷前検査を通して、ディーラーに卸売(ディストリビュート)します。ディーラーが最終消費者に新車を販売した情報を吸い上げて、今後の発注台数を決めるための情報源とします。

販売 〜チャネル構築・ブランディング・マーケティング〜

ディストリビューターは担当市場の販売を最大化するよう努めます。販売が期待できる地域にディーラーをアポイントし、販売チャネルを構築します。更に、自動車は非常に高価なものであり、顧客にはそのお金を払うだけの勝ちがあることを実感してもらえるよう、ブランディングを行います。ブランドの方向性を決め、それに沿った広告やイベントのプロモーションを企画します。また、どのような仕様の自動車がいくらで売られるべきか調査し、適切な方法で顧客にアプローチできるようマーケティングを行います。

市場の在庫管理

ディストリビューターは担当市場の在庫をコントロールします。その為に、ある一時点の在庫数量に気をもむだけではなく、メーカーへの発注から小売までのパイプライン全体のリードタイムを把握して、適正な発注数量の決定や、不良在庫の処分を行います。この在庫管理さえうまく行けば、たとえ販売台数が少ない市場だとしても、利益を確保すること可能です。

自動車の販売・在庫管理の伝統的手法

ディストリビューターは上記のように複数の機能を持っていますが、要約すると「可能な限りの自動車を販売し在庫をコントロールする」とも言えます。その為に、ディストリビューターは試行錯誤の末、あらゆるブランド・地域でほぼ共通する管理手法を使うようになりました。荷繰り・カーフロー・ランダウンと呼ばれる管理表を用いるものです。この管理表は、メーカーへの発注・生産・船積・現地到着・出荷前検査・卸売・小売の各工程を月毎・モデル毎に数値を集計して、新車流通パイプラインの動きを把握します。これはエクセルで行うのが大抵で、貴重な情報であるがゆえ精度が求められるうえ、膨大な数字を取り扱うことになります。
また、メーカーやディーラーはもちろん、ディストリビューター内の各部署でもそれぞれ異なる支店での管理が必要となり、販売・在庫管理の関連部署はかなりの数の資料のインプットとアウトプットが求められます。

パイプラインコントロール

ディストリビューターが行う販売・在庫管理は、パイプの中に水を入れて蛇口から出す様に似ていることからパイプラインコントロールとも呼ばれます。パイプライン中には様々な役割をもつ会社が登場します。
ディストリビューターは関係する会社に対して、販売在庫管理の情報を共有することも重要な仕事です。例えば、金融機関に対して、販売見込みと在庫推移を共有することで融資希望額の蓋然性を伝えることができますし、ディーラーに対しては予想納期やモデル毎の在庫情報を伝えることができます。その中でメーカーは、ディストリビューターにパイプライン全体の情報提出を義務付けていることが非常に多く、非常に重要な情報であると位置づけています。メーカーは定期的にパイプラインの情報を得ることで、販売状況の変化とそれに伴う発注量の適切さを注意深く観察します。必要に応じて、メーカーとディストリビューター間で販売・発注について協議します。そこで合意したものをメーカーの工場に連絡して、ジャストインタイムの部品調達計画を作ることで工場出し原価を低減していきます。

従来の販売・在庫管理の問題点

上記のように、販売在庫管理は自動車ビジネスにおいて最も重要な情報です。しかし、従来、膨大なデータをエクセルで管理し、メール添付の送信でのやり取りしているため、様々な問題が発生します。
まずは、データ管理とやり取りの効率が悪いことが挙げられます。エクセルは柔軟性が高く改変も容易であるため、正確なデータを保持する担当者は常に正確性を確認する必要があります。また、販売在庫管理情報を知るには、担当者からメール添付で送付してもらうことが、業界の中で一般的に行われており、非効率です。
次に、エクセルは販売在庫管理のためだけに作られソフトではないため、1つのシートで管理不可能になるほど管理表が大きくならないように、モデル・グレード・オプション・カラーを細分化した管理に限界があります。
そして、エクセルによる販売在庫管理はデータが膨大で複雑な計算式が組まれているため、担当部署や関連する会社毎に適した分析やデータの部分切り取りが困難であり、重要な判断に用いる情報を作成するために多くの時間がかかり、ときに間違えたデータを元に判断してしまうおそれがあります。

SaaSによる販売・在庫管理

そこで、自動車の販売在庫管理に特化した機能を持ったSaaS型アプリケーションを用いることで、効率的にデータをシステムにインプットし、データベースを管理して、様々な形のアウトプットを簡単に行うことができます。これまでの非効率さやデータの誤りから開放されます。
自社開発では、機能するかわからないが、膨大な時間とリソースを喰うことになり、その後謎の保守運用費がかかることになります。
一方市販ソフトによると(自動車の販売在庫管理に特化したソフトは多くありませんが)、自社サーバーの容量を用意しなければならないうえ、一度インストールしてから多くの場合は昨日のアップデートはありません。
SaaSであれば、様々なユーザーの要望を兼ね備えた最新の機能が非常に安い料金で利用することができます。

本稿を通じて、ディストリビューターの役割の多面性とその複雑さが明らかになりました。伝統的な手法から最新のSaaSによる管理方法に至るまで、自動車輸入販売業界は絶えず進化しています。これらの進化は、業界におけるディストリビューターの役割をさらに重要かつ不可欠なものにしており、今後も彼らの働き方と業界への影響を注視することが必要です。自動車業界の未来は、これらの革新的なアプローチによって、より効率的かつ持続可能なものになることでしょう。

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    この記事を書いた人

    石川毅志
    石川毅志
    1983年7月8日生。2007年早稲田大学卒業。伊藤忠商事(株)に入社し、東南アジア・アフリカ向のトレード・事業投資・管理に従事。2013年、自動車メーカーに出向し、販売・アフターセールス部門GMを務める。2019年、common(株)を設立し、代表取締役 CEO就任。BCG, McKinsey, Accenture, NEC, Deloitteなどへの自動車ビジネスコンサルティング実績多数。米国公認会計士全科目合格。