LPガス配送計画のつくり方|「いつ・誰が・どの順に回るか」を同時に決める考え方
LPガス配送計画のつくり方
「いつ・誰が・どの順に回るか」を同時に決める考え方
LPガス配送計画とは、どの需要家に、いつ、誰が、どの順番で容器を届けるかを決める業務です。一般的なトラック配送が「決められた納品先を効率よく回る」問題であるのに対し、LPガス配送は訪問日そのものを自社で決められるため、考えるべき変数が一段多くなります。この違いを踏まえずに配送計画を組むと、走行距離だけを短くしても訪問回数が減らず、かえって配送員の負担が増えるという結果になりがちです。
この記事では、LPガス配送計画を「いつ行くか」「誰が行くか」「どの順に回るか」の3つの問題に分解し、それぞれの判断基準と、3つを別々に決めることの弊害、そして数理最適化AIがこの問題をどう扱うのかを解説します。配送体制の見直しを具体的に進める段階の方に向けた内容です。

目次
配送計画は3つの問題に同時に答える必要がある
LPガス配送計画は、実際には次の3つの問題を解いています。
| 問題 | 決めること | 主に効く指標 |
| いつ行くか | 需要家ごとの次回配送日(配送サイクル) | 年間の総訪問回数 |
| 誰が行くか | 配送員と車両の割り当て、地区割り | 必要な配送員数・拘束時間 |
| どの順に回るか | 一日の訪問順序と積載計画 | 走行距離・燃料費 |
多くの現場では、この3つが別々の場面で、別々の基準によって決められています。訪問間隔は顧客台帳の設定値として固定され、地区割りは何年も前から変わらず、回る順番だけが毎朝その日の担当者の判断で決まる——という状態です。
しかし、この3つは互いに強く影響し合っています。訪問間隔を延ばせば一日の訪問件数が変わり、訪問件数が変われば必要な配送員数が変わり、担当地区が変われば走行距離が変わります。別々に決めている限り、全体としての最適には決してたどり着きません。
問題1:いつ行くか——配送サイクルの設計
3つの問題のなかで、最も効果が大きく、かつ最も手つかずになりやすいのがこの問題です。走行距離を1割縮めるより、訪問回数を1割減らすほうが、配送員の負担にも燃料費にも大きく効きます。
消費ペースから次回配送日を見積もる
次回の配送日は、本来なら需要家ごとの消費ペースから逆算できます。検針値の履歴があれば、直近数か月の使用量と季節変動の傾向から、残ガスがいつ一定水準を下回るかを見積もることは可能です。
ただし実務では、この計算をすべての需要家について毎月行うことは現実的ではありません。結果として、「この地区は6週ごと」「この規模の世帯は8週ごと」といった、丸めた運用に落ち着いているのが一般的です。
早すぎる配送と遅すぎる配送
配送サイクルの設定は、二種類のコストのバランスをとる作業です。
早すぎる配送
まだ残っているのに交換に行くため、訪問回数と走行距離が増える。回収した容器に残ガスがあれば、その分の再充填や在庫の手間も生じる
遅すぎる配送
切れ事故のリスクが生じる。緊急配送が発生すれば、計画そのものが崩れ、その日の他の予定にも影響する
多くの事業者が安全側、つまり早すぎる側に寄せて運用しています。これは供給責任を負う事業者として当然の判断ですが、その安全マージンが実際にどれだけのコストになっているかを把握している事業者は多くありません。まずは「現在の設定で、平均してどれだけの残量を残した状態で交換しているか」を数字で見ることが出発点になります。
問題2:誰が行くか——配送員と車両の割り当て
次に、その配送を誰が担当するかを決めます。ここには、業務上の制約と法令上の制約の両方が関わります。
資格・車両・地区の制約
割り当てにあたっては、次のような条件を満たす必要があります。
- 配送員が運転できる車両区分(保有免許)
- 車両ごとの積載可能な容器サイズと本数
- 訪問先の立地条件(狭隘道路、山間部、集合住宅など、特定の車両でなければ入れない場所)
- 需要家との関係性(長年同じ担当者が訪問しているケース)
- 充填所での積み込み時間と、その日の充填能力
このうち見落とされやすいのが充填所の制約です。全員が同じ時間帯に積み込みを行うと、充填作業が滞留して出発が遅れます。一日の計画は、需要家側の都合だけでなく、自社の充填所の処理能力からも制約を受けています。
保安業務との兼務をどう組み込むか
液化石油ガス法に基づく保安業務——定期供給設備点検、定期消費設備調査、周知——は、それぞれ実施期日が定められています。中小規模の事業者では、これらを配送員が兼務していることが少なくありません。
この場合、一日の予定は「配送すべき需要家」と「点検期日が近づいている需要家」の両方から組み立てる必要があります。理想的なのは、同じ需要家への訪問で配送と点検を同時に済ませることですが、配送のタイミングと点検の期日が必ずしも一致しないため、実際には調整が必要になります。
ここが、LPガス配送計画が単純な巡回ルート問題ではない最大の理由です。「配送だけを最適化したシステム」を入れても現場が楽にならないのは、この兼務の実態が計算に入っていないためです。
法令上の労働時間の制約
配送車を運転する従業員は自動車運転者にあたるため、改善基準告示による拘束時間・運転時間の基準が適用されます。1日の拘束時間は原則13時間以内、延長する場合も原則15時間が上限とされ、時間外労働は特別条項付き36協定を締結した場合でも年間960時間が上限です。
つまり「今日は多めに回ってもらう」という調整には限界があります。特に冬季は配送本数が集中するため、繁忙期を前提に人員配置を設計しておく必要があります。
問題3:どの順に回るか——訪問順序と積載
最後に、担当する需要家をどの順番で回るかを決めます。ここは一般的な巡回ルート問題に近い部分ですが、LPガス配送ならではの制約があります。
積載量という上限がある
容器には重量があり、車両に積める本数には上限があります。訪問先が増えれば増えるほど、途中で積載が尽きて充填所へ戻る必要が生じます。つまり訪問順序は、単に距離が短ければよいのではなく、「積載が持つ範囲でどこまで回れるか」という制約と一体で決まります。
空容器の回収も同様です。配送すればするほど空容器が積み上がるため、車両の残りスペースは訪問のたびに変化します。この動的な制約が、順序決定を複雑にしています。
訪問先の性質が違う
一般家庭、集合住宅、飲食店、事業所では、それぞれ訪問にかかる時間も、訪問可能な時間帯も異なります。飲食店は営業時間中の訪問を避けたい、集合住宅は容器置場までの距離がある、といった個別事情が積み重なります。これらは台帳には書かれていない、担当者の頭の中にある情報であることが多く、属人化の主要な原因になっています。
3つの問題を別々に解くと、なぜ非効率になるのか
ここまで見てきた3つの問題を、順番に一つずつ解いていくとどうなるか。具体例で考えてみます。
まず訪問間隔を延ばしたとします。訪問回数は減りますが、一回あたりの配送本数は増えます。すると積載が早く尽きるため、充填所への往復が増え、走行距離はかえって伸びるかもしれません。また、これまで週3回訪問していた地区が週2回になると、その地区に割り当てていた配送員の稼働に空きが生まれます。その空き時間を別の地区や保安業務に振り向けられなければ、人件費は1円も減りません。
逆に、地区割りだけを見直したとします。走行距離は縮まりますが、訪問間隔の設定が従来のままであれば、そもそも不要な訪問が残り続けます。
3つの問題は連動しているため、順番に解いても全体最適には届きません。これが、配送効率化に取り組んだのに「思ったほど効果が出なかった」という結果になりやすい理由です。
数理最適化AIはこの問題をどう扱うか
数理最適化は、この3つの問題を一つの問題として同時に解くための技術です。
制約条件として何を入れるか
最適化の質は、どれだけ現場の実態を制約条件として表現できるかで決まります。LPガス配送では、次のような条件を組み込みます。
- 需要家ごとの消費ペースと、許容できる残量の下限
- 容器のサイズ・本数と、車両ごとの積載上限
- 配送員の保有資格と運転可能な車両
- 改善基準告示に基づく拘束時間・運転時間・休憩
- 充填所の位置、積み込み時間、処理能力
- 保安業務の実施期日
- 訪問先ごとの作業時間と、訪問を避けたい時間帯
- 担当者を固定したい需要家の指定
制約条件を細かく設定することは、解の質を落とすものではありません。むしろ実務上ありえない組み合わせを最初から探索対象から外すことで、計算量が減り、現場で使える解が出やすくなります。「この地区はこの人でないと回れない」といった条件も、遠慮なく制約として入れるべきです。
計算時間と再計画
問題の規模に応じて解法を切り替えることで、実務で使える時間内に計画を算出します。規模が小さければ全ての組み合わせを列挙して最適解を選び、大きい場合は探索アルゴリズムによって制限時間内での最良解を採用します。
また、当日に急配が入ったり車両が故障したりした場合には、変更部分だけを計算し直すことで、短時間で計画を組み直せます。計画は一度作って終わりではなく、その日のうちに何度も更新されるものだという前提で設計することが重要です。
導入前に整理しておきたいデータ
最適化に取り組む際、次の情報が揃っているほど検討がスムーズに進みます。すべてが完璧に揃っている必要はありません。
- 需要家マスタ(所在地、設置容器のサイズと本数、契約内容)
- 検針値または使用量の履歴(できれば1年以上、季節変動を把握するため)
- 現在の配送実績(いつ、誰が、どこを、どの順に回ったか)
- 車両マスタ(積載可能本数、燃費、キロ当たり走行コスト)
- 配送員の情報(保有資格、担当地区、勤務条件)
- 充填所の位置と、積み込みにかかる時間
- 保安業務の実施履歴と次回期日
このうち最も価値が高いのは、検針値の履歴と配送実績です。この2つが揃っていれば、「現在の配送サイクルが実際の消費に対してどれだけ余裕を持っているか」を定量的に評価でき、改善余地の大きさを投資判断の前に把握できます。
効果をどう測るか
配送効率化の効果は、複数の指標で見る必要があります。走行距離だけを見ていると、訪問回数の削減という最も大きな効果を見落とします。
- 年間の総訪問回数(最重要)
- 総走行距離と燃料費
- 必要な配送員数、および一人あたりの一日の訪問件数
- 配送員の拘束時間と時間外労働時間
- 充填所への帰着回数
- 交換時の平均残量(安全マージンが適正かの指標)
- 配送計画の作成にかかる時間
導入前後で同じ条件のデータを比較できるよう、着手前の時点でこれらの数値を記録しておくことが重要です。効果検証(PoC)では、実際の配送データを使って現行の計画と最適化後の計画を比較し、これらの指標がどれだけ改善するかを数字で確認したうえで、次に進むかを判断できます。

まとめ
LPガス配送計画は、「いつ行くか」「誰が行くか」「どの順に回るか」という3つの問題に同時に答える業務です。この3つは互いに連動しているため、順番に一つずつ改善しても全体最適には届きません。
特に効果が大きいのは「いつ行くか」、つまり配送サイクルの設計です。走行距離の短縮よりも、訪問回数そのものの適正化のほうが、配送員の負担にも費用にも大きく効きます。そのうえで、保安業務との兼務や法令上の労働時間まで含めて一つの問題として解くことで、現場が実際に使える計画に到達できます。
配送計画の見直しは、説明を読むだけでは自社での効果を判断しにくい取り組みです。まずは実際の最適化計算を見ることで、現在の配送との違いを具体的にイメージできます。
ルートコンパスAIのページでは、配車最適化のデモをその場で体験できます。条件を変えて「最適化を実行」ボタンを押すと、ブラウザ上で実際に計算が行われ、設定した条件のもとで総コストを抑える計画がどのように算出されるのかをご確認いただけます。
自社データを使った具体的な削減効果については、導入前の効果検証(PoC)を通じて確認できます。まずはデモで最適化の動きを体験し、そのうえでPoCへ——という順序で、低リスクに検討を進められます。
お問い合わせ
サービスの詳細・導入検討に関するご相談を承ります。
3 営業日以内に担当者よりご返信いたします。

