食品・定温配送の配車効率化|温度帯・時間指定・多頻度小口を同時に満たす計画のつくり方
食品・定温配送の配車効率化
温度帯・時間指定・多頻度小口を同時に満たす計画のつくり方
食品・定温配送の配車効率化とは、温度帯・納品時刻・鮮度という食品特有の制約を守りながら、限られた車両とドライバーで配送を回しきるために、配車計画の質を高める取り組みです。食品物流は、他の貨物と比べて制約条件が圧倒的に多く、そのぶん配車担当者の負担も大きくなりがちです。2024年問題と商慣行の見直しが同時に進むいま、この計画づくりをどう仕組み化するかが問われています。
この記事では、食品配送の配車が構造的に難しい理由から、温度帯・時間指定・多頻度小口という3つの課題への対応策、制度面の動き、そしてAI配車・配車システムを選ぶ際の食品特有の確認事項までを体系的に解説します。食品卸、低温倉庫、食品メーカーの物流をご担当の方に向けた内容です。

目次
制約が多すぎる配車問題
食品の配送は、配車という業務のなかでも特に条件が厳しい部類に入ります。
「チルドと冷凍とドライを、同じ便で運びたいが積み分けが難しい」
「センター納品の時刻が決まっていて、早着しても入れてもらえない」
「一件あたりのケース数が少なく、車両が満載にならない」
こうした悩みは、食品を扱う事業者に共通しています。しかも一つひとつの制約に妥協の余地がありません。温度が管理できなければ商品にならず、納品時刻を外せば受け取ってもらえず、鮮度が落ちれば返品になります。「多少の遅れは許容する」という調整が効きにくいのが食品配送の特徴です。
その一方で、ドライバーは増やせず、労働時間には上限が課され、燃料費は上がり続けています。制約が増えるなかで使える資源だけが減っていく——これが食品物流のいまの状況です。
食品・定温配送とは
食品・定温配送とは、温度管理を必要とする商品を、指定された温度帯を維持したまま届ける配送業務です。一般に、常温(ドライ)、定温、冷蔵(チルド)、冷凍(フローズン)といった温度帯に分かれます。
配車担当者は毎日、納品先ごとの発注数量、指定納品時刻、商品の温度帯、車両の温度設定と積載量、ドライバーの勤務時間、センターでの待機時間、そして賞味期限に関わる納品期限といった条件を同時に考慮しながら計画を組み立てています。
この計画の質は、配送コストだけでなく、返品率、鮮度、そして取引先からの評価にまで直結します。食品配送における配車は、コスト管理であると同時に品質管理でもあります。
食品配送の配車が難しい4つの理由
食品配送の配車が他業種より難しいのは、次の4つの条件が重なるためです。
| 条件 | 配車への影響 |
| 温度帯 | 車両そのものが制約になる。途中で温度帯を変えられないため、混載の可否が組み合わせを強く縛る |
| 納品時刻 | 早着も遅着も許されないことが多く、時間枠が狭い |
| 多頻度小口 | 保有車一件あたりの数量が少なく、積載率が上がりにくい |
| 鮮度・納品期限 | 商品によっては配送順序そのものに制約がかかる |
注目すべきは温度帯です。一般的な配車問題では、荷物は「積めるか積めないか」という重量・容積の制約を受けますが、食品配送ではそれに加えて「同じ車に載せてよいか」という組み合わせの制約が加わります。しかも仕業の途中で車両の温度帯を切り替えることは現実的ではないため、一台の車がその日に運べる商品の範囲が、出発時点で決まってしまいます。
食品配送が抱える3つの課題
配車がうまく回らないとき、原因は担当者の能力ではありません。次の3つが構造的に絡み合っているためです。
温度帯が車両を縛る
チルド車と冷凍車では運べる商品が違い、二層式・三層式の車両を保有していても、仕切りの位置によって各温度帯に積める量が決まります。結果として、「配送先は近いのに、温度帯が違うから別の車で行く」という非効率が日常的に発生します。
この問題は、車両ごとの温度帯構成を固定的に考えている限り解けません。どの車をどの温度帯構成で出すか、という設定自体を計画の変数として扱えるかどうかが分かれ目になります。
時間指定と待機時間
食品センターや量販店のバックヤードでは、納品時刻が細かく指定されているのが一般的です。しかも早く着いても受け入れてもらえないため、指定時刻より前に到着した車両は待機することになります。
この待機時間は、ドライバーの拘束時間にはカウントされる一方、輸送そのものには何も貢献しません。配車計画の段階で待機を織り込めていないと、実際の運行では拘束時間が想定を大きく超え、結果として法令の上限に抵触するおそれが生じます。
多頻度小口と積載率のジレンマ
食品流通では、鮮度を保つために少量を頻繁に納品する慣行が定着しています。納品先にとっては在庫を持たずに済む合理的な仕組みですが、運ぶ側から見れば、一件あたりの数量が少なく、車両が満載にならないまま走る便が増えることを意味します。
農林水産省の資料では、トラック輸送全体の積載効率が4割前後にとどまる状況が示されており、何も対策を講じなければ2030年度には3割を超える輸送力不足が生じる可能性が指摘されています。納品頻度を減らせば積載率は上がりますが、それは取引先との条件見直しを伴うため、自社の配車計画の工夫だけでは解決できない領域でもあります。
2024年問題と商慣行見直しが食品配送に与える影響
2024年問題とは、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制と改善基準告示の改正によって、トラックドライバーの労働時間に明確な上限が課された問題です。時間外労働は特別条項付き36協定を締結した場合でも年間960時間が上限で、1日の拘束時間は原則13時間以内、延長する場合も原則15時間が上限とされています。
食品配送では、早朝の納品や深夜の積み込みが多く、加えて納品先での待機が発生しやすいため、この規制の影響を強く受けます。「もう一便回す」「今日は残業で対応する」といった従来の運用は難しくなりました。
一方で、制度の側でも動きがあります。国は物流の効率化に向けた政策のなかで、納品期限のいわゆる3分の1ルールや短いリードタイムといった商慣行の見直しを重点課題に挙げており、食品分野では多数の団体・事業者が自主行動計画を策定しています。納品条件は「変えられないもの」ではなく、業界全体として見直しが進んでいる領域だという認識が重要です。
食品・定温配送の効率化を実現する主な方法
効率化には、取り組みやすいものから段階があります。自社の状況に合わせて組み合わせるのが現実的です。
納品条件を取引先と見直す
納品頻度、指定時刻の幅、リードタイム、納品期限といった条件は、配車の自由度を最も強く縛る要素です。時間指定を「9時ちょうど」から「9時から11時の間」に広げてもらえるだけで、組める配車計画の選択肢は大きく増えます。効果は最も大きい一方、相手のある話であるため時間を要します。
交渉にあたっては、条件が緩和された場合にどれだけ効率が改善するかを数字で示せるかどうかが説得力を左右します。ここは最適化計算が役立つ場面です。
積載率を上げる
温度帯をまたぐ混載、近隣の納品先をまとめた便の組成、同業他社との共同配送などによって、一便あたりの積載率を高めます。積載率の改善は、走行距離あたりの運べる量を直接増やすため、輸送力不足への対応として最も本質的な打ち手です。
配送ルート・訪問順序を見直す
納品時刻を守れる範囲で訪問順序を組み替え、走行距離と待機時間の無駄を削減します。効果を実感しやすく、着手のハードルも低い取り組みです。
AIによる配車最適化を活用する
AI配車や配車最適化システムでは、数理最適化や探索アルゴリズムを活用し、温度帯・積載量・納品時刻・ドライバーの拘束時間・訪問順序といった多数の条件を同時に考慮して、効率的な配車計画を算出します。
食品配送のように制約が多い業務ほど、人間が暗算で最適解に到達することは困難です。逆に言えば、条件が複雑であるほど計算力による改善余地が大きく、AI配車の効果が表れやすい領域だと言えます。当日の急な数量変更にも、素早い再計画で対応できます。
配車システムを選ぶ際のポイント
導入時は価格だけで判断せず、食品配送特有の条件を扱えるかを見極めることが重要です。次の項目を確認しましょう。
- 温度帯を車両と荷物の双方の条件として設定できるか
- 二層式・三層式車両の仕切り構成を考慮できるか
- 納品先ごとの指定時刻と、早着の可否を条件にできるか
- 納品先での荷卸し時間・待機時間を計画に織り込めるか
- ドライバーの拘束時間・連続運転時間を考慮できるか
- 当日の数量変更や追加注文に再計画で対応できるか
- 自社便と傭車の混在に対応しているか
- 既存の受注・在庫・基幹システムと連携できるか
- 導入前に効果検証(PoC)ができるか
特に「温度帯を車両と荷物の双方の条件として設定できるか」は、食品配送では必須の確認事項です。温度帯を単なる備考情報としてしか扱えないシステムでは、実務で使える計画は出てきません。
効果が期待できる企業の特徴
次の条件に当てはまる企業ほど、配車最適化の導入効果が大きく表れます。
- 自社便を保有している
- 複数の温度帯を扱っている
- 納品先が多く、一件あたりの数量が小さい
- 納品時刻の指定が細かい
- 日々の受注数量の変動が大きい
- 配車計画が特定の担当者に属人化している
これらは中小の食品卸、低温倉庫、食品メーカーに共通して見られる特徴です。条件が複雑で変動が大きいほど、最適化による改善余地は大きくなります。
コストはどう考えるべきか
配車効率化への投資は、導入費用だけを見て判断すべきではありません。削減できる金額を先に把握し、投資対効果で考えることが重要です。
投資対効果は、主に「削減できる燃料費」「削減できる残業代」「削減できる配車作業時間」「削減・抑制できる車両関連費用」と、システムの導入・運用費用を比較して判断します。食品配送の場合は、これに「削減できる返品・廃棄」を加えて考えることができます。
年間改善効果 = 燃料費の削減額 + 人件費(残業代・作業時間)の削減額 + 車両関連費用の削減額 + 返品・廃棄の削減額 + その他の改善効果
加えて、属人化リスクや法令違反リスクの低減、納品品質の安定という、金額に表れにくい経営効果もあります。これらの削減効果は、導入前の効果検証(PoC)を通じて、自社の配送データをもとに試算できます。
大切なのは、「効果が出るか分からないものに投資する」のではなく、「先に削減額を見てから、確実な範囲で投資する」という順序で進められることです。

まとめ
食品・定温配送の配車効率化は、単なる業務改善ではなく、2024年問題・人手不足・属人化という経営課題への対応策です。温度帯が車両を縛り、納品時刻が時間枠を狭め、多頻度小口が積載率を下げる——この3つが重なることで、食品配送の配車は他業種より一段難しい問題になっています。
だからこそ、計算力による支援が効きます。取り組みの道筋は、納品条件を取引先と見直し、温度帯と時間枠を条件として明示的に組み込み、最適化の技術で複数条件を満たす計画を導き、その効果を導入前に数字で検証する——という順序で描けます。
配車効率化は、説明を読むだけでは自社での効果を判断しにくい取り組みです。まずは実際の最適化計算を見ることで、現在の配車との違いを具体的にイメージできます。
ルートコンパスAIのページでは、配車最適化のデモをその場で体験できます。まずは「最適化を実行」ボタンから、輸送費・労務費・拠点作業費・遅延ペナルティを考慮し、設定した条件のもとで総コストを抑える計画がどのように算出されるのかをご確認ください。
自社データを使った具体的な削減効果については、導入前の効果検証(PoC)を通じて確認できます。まずはデモで最適化の動きを体験し、そのうえでPoCへ——という順序で、低リスクに検討を進められます。
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