• 石川毅志

【起業家x会計x商社の考え方】スタートアップの評価額【ダウンラウンドの投資家保護】

更新日:2020年9月9日



commonの石川です。


上場前の企業価値はどのように
決まるのですか?
どうすれば、
企業価値を高くできるのでしょうか?

東京証券取引所や

マザーズなどに

株式を公開すれば、

市場で株式が売買されることで、

株価、

則ち企業価値が決まります。


ただ、

圧倒的多くの企業は

上場していません。


そのような時に

どのように株価、

ひいては企業価値を

決めるのでしょうか?


今回は

特に、

期待収益を見通しづらい

スタートアップを中心に

お話しします。


スタートアップの評価額

スタートアップの関係者の間では、

企業価値をバリュエーションと

呼ぶことが多いです。


結論から言うと、

バリュエーションを決める

絶対的な方程式はありません。


結局は上場企業と同じように、

すでに株式を保有している

経営者や

これまでの投資ラウンドで

参加した投資家と

これから参加する投資家などの

合意で決まります。


上場企業や社歴の長い会社は、

事業とそこから生まれる収益が

安定しており、

先々の見通しが立てやすいため、

DCF法などで、

バリュエーションの参考値を

求めやすくなっています。


一方、

未上場のスタートアップは

事業内容をガンガン変化・進化

させていくため、

収益が見通しづらく、

DCF法による

バリュエーションが

意味を持たないことが多いです。


バリュエーション合意の際、

当然ながら、

総資産から負債を引いた純資産は

ベースとなります。


純資産に対して、

簿外で評価するべきプレミアムが

どれくらいか

を考えることになります。


例えば、

収益化ができていないものの、

ユーザー数がものすごい勢いで

伸びていることを示せたり、

ニッチでも市場シェア1位であり

同市場を寡占した後に、

隣の市場に横展できるような

場合には、

高いプレミアムが付くことがあります。


また、

経営者の過去の実績なども

プレミアムに影響する要素です。


これらの要素に

仮説を立てながら、

合意できるバリュエーションを

決めていきます。


バリュエーションが高過ぎて倒産?!

経営者は

現時点でのバリュエーションを

常に意識しておくものですが、

特に、

意識するタイミングは、

増資をする時です。


スタートアップは、

技術開発や市場の動きが早く、

また、

特にIT業界においては、

「勝者総取り」と言われるように、

早く大きなシェアを獲得する

必要があるため、

稼いだお金を投資に回して、

着実に成長するよりも、

外部から資金を調達して、

事業を大きくするケースがあります。


また、

調達についても、

経営基盤が不安定なこともあり、

金融機関からの借り入れが難しく、

ベンチャーキャピタル、

エンジェル投資家、

事業会社などから、

投資を受けることが多いです。


この際に、

バリュエーションが必要になります。


普通に考えれば、

既存株主である

経営者や

参画済みの投資家は、

増資後(ポストバリュー)において、

保有している持分の比率を

高く維持するために、

高いバリュエーションを求めます。


一方で、

新たに参画する投資家は、

安い価格で

大きな持分を得るために、

低いバリュエーションにするのが

普通です。


そのため、

経営者などの既存株主は、

嘘のない範囲で、

業績がよく見えるように

プレゼンしたりして、

バリュエーションを高くしようと

試みます。


ただし、

あまりにも化粧がうまくて、

バリュエーションが

高くなり過ぎてしまった時、

困ったことが起きることが

あります。


例えば、

実際の企業価値:10億円

増資時のポストバリュエーション:100億円

増資(調達額):10億円

の場合、


自力以上に評価されて、

既存株主はわずか10%弱の

株主価値の希薄化で

10億円の調達が完了して、

大喜びとなりそうです。


これから

この会社が、

奇跡的な成長を遂げて、

ポストバリューに追いつけば、

問題ありません。


しかし、

資金が不足して、

次の増資(調達)をするときの

企業価値が

20億円にとどまっていたらどうでしょうか?


もう10億円調達したいけれども、

前回バリュエーションが

実力より高過ぎて、

誰もこの会社の数%の持分を得るために、

10億円も出したがらないでしょう。


そうなると、

調達ができなくなるため、

前回より企業価値を下げざるを

得ないことになります。

この状況をダウンラウンドと呼びます。


この場合、

実態通り、

増資前のバリュエーション(プレバリュー)が

20億円で、

調達額が10億円ですと、

この投資ラウンドの投資家は、

33%の持分を有することになり、

既存株主の持分が希薄化して、

大きく保有価値を毀損してしまうことに

なります。


契約で希薄化防止!

ダウンラウンドにおいて、

既存投資家を保護する方法として、

投資時の

投資契約にラチェット条項を

盛り込むことがあります。

ラチェット条項とは、

前回投資時から

バリュエーションが下がった状態で、

増資する場合は、

前回投資額をダウンラウンドの株価に

合わせて計算し直すと言うものです。

上の例で言うと、

前回投資家は、

100億円のポストバリューに対して、

10億円投資することで10%弱の持分を

保有していたのに、

今回の増資ラウンドで

持分比率が7%まで下落する一方、

今回ラウンドで前回既存投資家が

投資した額と同じ10億円を

投資した新規投資家は、

23%程度の持分を有することになります。


これでは、

先にリスクをとった

前回投資が報われず、

投資意欲が下がってしまうと言うことから、

ラチェット条項を盛り込み、

これに従い、

前回投資額を今回の株価に調整することで、

持分比率を20%に引き上げることが

できます。


ただし、

お気づきだと思いますが、

ラチェット条項で

既存投資家が保護されている分、

ラチェット条項で守られていない、

経営者は

持分比率をその分下げることになります。


それを緩和するために、

加重平均法という

株価算定方式などがあります。

まとめ

変化の激しいスタートアップの

バリュエーションは難しいです。


純資産に対して、

事業成長率、

高シェアなどの

簿外の評価プレミアムをどれだけ

乗せられるかポイントです。


バリュエーションは

高い方が良いが、

実態以上に高く評価されると、

ダウンラウンドしなければならない状況に

追い込まれる可能性があります。

その際に、

既存投資家を保護するために、

ラチェット条項や

加重平均法による株価算定方法が

採用されることがあります。

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