AI×IoTで仕掛率を自動算出する方法
AI×IoTで仕掛率を自動算出する方法
製造業の月次締めにおいて、仕掛品(WIP)の評価は最も大きなボトルネックの一つです。人手による進捗集計やExcelベースの概算では、数値のばらつきと膨大な手間が避けられず、経理と現場を巻き込んだ“締日地獄”が毎月繰り返されます。本記事では、IoTセンサーとAI画像解析を組み合わせて「リアルタイムに正確な仕掛率」を自動算出する手法を解説し、月次締めを1日以内に短縮するポイントをご紹介します。

目次
なぜ仕掛率自動算出が必要か
従来の仕掛率計算は、現場から報告された紙またはExcelの生データを経理担当が手作業で集計するのが一般的です。
しかし、
- 作業漏れ・転記ミス
- 進捗度の主観差
- 月末一括集計による遅延
といった問題を常に抱え、数値の信頼性が担保されません。これが、原価計算や在庫評価のブレにつながり、経営判断にも悪影響を及ぼします。
IoTセンサーとバーコード/QRの活用
第一のステップは、部品やサブアセンブリにRFIDタグやQRコードを貼付し、各工程を通過するたびに自動読取する仕組みの導入です。
- RFID/QRゲート:工程入口・出口に読取装置を設置し、通過時刻をログ化
- タブレットスキャン:手作業が残る小規模工程はタブレットで1タップ集計
- データ蓄積:Kafka/MQTT経由で時系列DB(例:TimescaleDB)へストリーミング
これにより「いつ」「どの車台が」「どの工程を何時にクリアしたか」を漏れなく取得できます。
AI画像解析による出来高推定
RFID/QRだけでは検知が難しい細かな作業進捗(例:内装部品の個別装着)は、ライン上のカメラ映像をエッジAIで解析して定量化します。
- ディープラーニングモデルを用いて“装着済部品数”をリアルタイム推定
- 進捗率=装着済部品数/全装着部品数×100% を算出
- Human in the Loop:誤判定発生時は現場リーダーがタブレットでワンタップ修正→そのデータを再学習に反映
AI画像解析を組み合わせることで、RFID/QR単体では難しかった“途中工程の可視化”を実現します。

システム構成とデータ連携のポイント
インメモリ計算エンジン
ストリーミングされたIoTとAIデータは、インメモリ処理が速いRedis(注1)やApache Flink(注2)などでリアルタイム演算を行い、ダッシュボードへ即反映。
バッチ同期と冗長アーキテクチャ
ネットワーク断の多い海外ノックダウン工場では、
- Edge Box:ローカルでAI推論+一次集計
- オフライン同期:夜間バッチで本社クラウドとデータ整合
を組み合わせ、常時クラウド接続が不要な耐障害性を確保します。
AI×IoTによる仕掛率自動算出は、
- RFID/QR で「いつ何の部品がどこを通過したか」を確実にログ化
- AI画像解析 で細かな作業進捗を定量化
- インメモリ演算 でリアルタイムにダッシュボード更新
という三段階アプローチで構成されます。導入にあたっては、現場機器の最適配置とAIモデルの継続的チューニングが成功の鍵。正確かつ高速な仕掛率計算を実現すれば、月次締めを1日以内に短縮し、経理・現場双方の大幅な工数削減と数値信頼性の向上が期待できます。
(注1) Redis(レディス、Remote Dictionary Server):メモリ上で動作するインメモリデータベースの一つです。 データがメモリ上に保存されるため、ハードディスクとメモリ間の行き来をする必要がなく高速にデータを処理するので、各種アプリケーションからの高速アクセスを実現します。
(注2) Apache Flink:ストリーム処理とバッチ処理の両方をサポートするオープンソースの分散処理エンジンです。高いパフォーマンス、スケーラビリティ、耐障害性を備え、リアルタイム分析やイベント処理など、幅広いユースケースで利用されています。
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